資生堂に代表されるように、近年日本企業でもFP&Aを組織に取り入れる会社が出始めているが、まだまだその数は外資系企業に比べると限定的というのが実態である。
その状況の中で、外資系よりも日本企業で未経験からFP&Aを目指したいと考える人は、チャンスがないと諦めるしかないのだろうか?
客観的にアドバイスをさせていただくと、あなたの中にもし少しでも将来的に外資系でのキャリアが選択肢としてあるという場合は、最初から外資系企業のFP&A職を探すことをオススメしたい。
というのも、FP&Aの導入を始めたばかりの日本企業では、まだまだその実態として外資系のFP&Aがやっているレベルの業務内容と仕事のクオリティが求められる会社はほんの一握りで、ほとんどのケースはそれ実現すためにFP&Aの存在価値を一から組織に浸透させてほしいという期待値が伴ってくる。ということは、実質日本企業でFP&Aを求めている会社は、未経験者ではなく一定の経験値を伴った即戦力を採用したいという意向が極めて強くなってしまうのだ。
そこに未経験で体当たりするには、限りなく高いハードルが待っていることになる。
それでもFP&Aへの道を日本企業一本で考えている人には、次の3つのアドバイスを送りたい。
- FP&Aに通ずる経験を積む
- FP&Aに必要なスキルを持っていることを客観的に証明する
- 志望する会社は、その規模や業界も含めて幅広く検討する
① FP&Aに通ずる経験を積む
この経験を積むことが最重要ポイントで、これが上述したFP&Aとしての仕事を即戦力として実行できるだけのポテンシャルを持っていることを証明するものとなる。
では、そのFP&Aに通ずる経験とはどのようなものかを見ていきたい。例えば、営業とマーケティングを例に取ると、次のような経験がその代表例となる。
営業の場合
- 担当先の中長期目標と年間ターゲットを自ら策定・先方と合意し、正しい実行戦略を立ててそのターゲットを達成した
- 担当先オリジナル製品を自ら提案し、マーケティングや製造部門を巻き込み発売まで漕ぎ着けた
- 自社製品に関わる箇所だけでなく、担当する会社全体の財務諸表を分析し、その会社の投資プランの作成や、株式購入を通じてビジネス継続して成長させることのできる関係を構築した
マーケティングの場合
- 担当ブランドの中長期計画と年間ターゲットを自ら策定し、正しい実行戦略を立ててそのターゲットを達成した
- マーケットの分析と将来予測により会社が投資すべきカテゴリーと実行戦略を自ら提案し、関係部署を巻き込み会社を動かした
- マーケティング活動にかかるコストと費用対効果を分析し、インパクトのある改善を成功させた
日系企業の管理会計と外資系FP&Aの違いはこちら
② FP&Aに必要なスキルを持っていることを客観的に証明する
経験の次はスキルを持っていることを証明しよう。FP&Aに必要なスキルセットについてはその詳細をこちらの記事にまとめているのでここでは割愛するが、それをどうやって証明するかというと、大きく2つのやり方がある。
1つ目のやり方は、資格の取得によってそのスキルや知識を証明するというものだ。このやり方を取っている方は外資系のFP&Aにチャレンジする方にも多く見られる。
例えば、次の資格が具体的に挙げられる。
- MBA
- 中小企業診断士
- USCPA
- 日商簿記検定2級
2つ目のやり方は、過去の実績を用いて証明するというものだ。特にこれは問題解決スキルの証明に対して大きな根拠となる。
どのような類の問題解決がFP&Aの実務では必要となるのかについてはこちらのFP&Aの仕事内容で説明しているのでここでは割愛するが、それらに類似した内容を自らが主体となって解決したというエピソードを話すことができれば、たとえ当時のポジションは違っていたとしても実質的にやっていることはFP&Aと同じことをやっていると見なすことが可能となる。
ここでポイントとなるのが、FP&Aは最終的なビジネスの結果にまでその責任が問われるという点を押さえるということだ。
よりわかりやすく言うと、FP&Aはコンサルや監査法人の様にある特定の問題を解決したらそれで終わりというものではなく、その解決後も継続してビジネスを成長させる責任を持っている。つまり、その問題解決が、最終的にビジネスで結果を生むことに繋がったということまで経験している必要があるのだ。
この点を意識して、あなたの過去に成し遂げた実績を振り返ってみてほしい。
③ 志望する会社は、その規模や業界も含めて幅広く検討する
最後の要素が、会社選びの基準についてだ。はじめに触れたように、ただでさえ求人が限られる日本企業のFP&Aをどうしても目指したいという場合は、特定の会社に拘ってしまうと中々その機会に巡り合える確率が低くなってしまう。
自分でFP&Aの組織を持っている日本企業を探すのは相当な労力がかかるのに加え、その情報を網羅的に把握するのは至難の業だ。それに自分で調べ上げたとしてもインターネット上の情報は同じことを考えている人もすでに持っていると考えた方がよいだろう。つまり、そのやり方では結果的に倍率が高くなってしまう。
そういうときに活用したいのが、転職エージェントだ。彼らは非公開案件も含めてFP&A案件がどの会社で現在発生しているか、もしくは将来的に発生する可能性があるかを把握しているため、彼らのサポートを得ることができればもしかすると穴場の会社を見つけることが出来るかもしれない。
どのタイミングでもすぐに案件を紹介してもらえる保証はないが(これは日本企業に限らずだが)、あなたにも転職エージェントを頼ってよりあなたの望む会社を見つけてほしい。